15年勤めた企業を退職した理由 (5) 偉くなっても自由は効かない

ハードル競技

小さい頃、テレビでオリンピックを見ていてふと思いました。

「オリンピックで金メダルを取ったカール・ルイスに、何でコーチが付いているのか」

だって、カール・ルイスは世界で一番足の速い人でしょう? その世界で一番足の速い選手に、いったい誰が教えられるのか? コーチの方が足は遅いんじゃないのか?

小学生ぐらいだったと思いますが、そんな疑問を持っていた記憶があります。

主演と監督は分けた方が良い映画が撮れる

10年以上前ですが、日本アカデミー賞を受賞した【血と骨】という映画を観ました。主演は北野武さん。監督は崔洋一 さんでした。

血と骨
画像出典:Amazon.co.jp

何かの番組で、たけしさんがインタビューを受けていたのを見て、その記憶が残ってます。

記憶に基づく回想シーン

インタビュアー「たけしさん、今回は主演のみですが、ご自身がメガホンを取られて監督をやろうとは思わなかったんですか?」

たけし「自分が監督と主役を両方やったててさ、激しいシーンとか撮るじゃない。例えば、座頭市の土砂降りの雨の中での殺陣とかね。そういう時、自分が役者として出演してるとさー、もう大変だから、オイラは『ハイOK』って言っちゃうのね

「でも、他の人が監督してると違う。崔さんなんて、うまいのよ。セットを壊すような激しいシーンでも、いやーたけしさん良かったよ!迫力出てた!よし、その調子でもう1回行こうかって感じでね(ズッコケ)」

「役者としてはキツイ、大変だよ。でも、出来上がった作品を見ると、やっぱり良い作品に仕上がるんですよ

そのインタビューを見ていて、そうか、そういうことかーと腹落ちしました。

映画の主演と監督だけでなく、選手とコーチの関係でも同じ事が言えそうだなと…。 何かを一生懸命になって実行する人と、それを管理する人は、可能であれば分けた方が良い。

実行と管理を同じ人がやると、どうしても自分に甘くなる。

だから、良い結果を出したかったら、大変かもしれないけど、実行者と管理者を分ける方が良い結果が出るんだと、そのインタビューで分かったんだよ、バカヤロー!ダンカン、コノヤロー!

バカ論
画像出典:Amazon.co.jp

執行と監督の分離

実は、企業経営でも同様の原理が取り入れられています。(日本では導入企業がそれほど多くはないですが)例えば、ガバナンスを強化した委員会設置会社という組織形態では、業務執行と監督機能がしっかりと分離されております。

執行と監督の分離について、以下の図を用いて説明します。

委員会設置会社

まず、株式会社で一番偉いのは誰だと思いますか。

一番偉いのは社長でも会長でもありません。 株式会社で一番偉いのは株主です

とは言っても、経営のプロではない株主たちは、普段の会社活動になかなかモノ申す事は出来ません。なので、株主総会の決議で取締役を選任します

取締役は経営のプロです。株主の付託を受けて、会社の経営陣が、ちゃんと仕事をするかを取り締まるのが仕事です。

そして、取締役会には社外取締役を入れます。

社内の人だけで取締役会を構成しては、内部の論理がまかり通ってしまうので、株主としては外部の厳しい目を入れたいところです。

社外取締役の比率が過半数以上で、かつ天下りとかではない、ガチンコのプロ経営者が社外取締役に入ってくると、取締役会の議論も白熱します

取締役会議は議事録が残ります。会社の経営陣が、明らかに会社に損害を与えるような投資をしてあるのを、社外取締役がわかってて見逃したりすると、株主から訴訟を受けるリスクもあります。

なので、アメリカなんかは、社外取締役といえどガチンコです。会社の全体戦略に関する意思決定と、経営陣の業務執行に関する監督について、真剣に議論します。

次に執行役についての説明です。

図を再掲

委員会設置会社

社長は、代表執行役社長であり、その配下の役員も執行役です。執行役は取締役会のメンバーも兼任することが可能です。

執行役は、自身管掌している事業について、定期的に取締役会で報告を行ったり、大きな投資など重要事項については取締役会議での承認を求めます。

執行役A氏は53歳。創業以来の歴史あるB事業を前任者から引き継ぎました。自分がこの事業を管掌するようになってからは、現場と一体となって事業の改善を行ってきました。

今回の取締役会で、B事業の創業以来の歴史、社会的重要性、いかに現場と一体となって頑張って改善を積み重ねてきたかをプレゼンしました。

よし、決まったぜと思った瞬間…プロ経営者である社外取締役からいきなり厳しいツッコミが入ります

社外取締役
ビジネスライクに激詰めする社外取締役

「この事業は営業利益率3%ですよね。いや、創業とか、歴史とか、知らないんですけど、このゴミみたいな事業、やる意味あんの?なんなの?バカなの?株主なめてんの?早くやめたら?」

…残念ですけが、社長だろうが役員だろうが所詮は雇われサラリーマンです。中間管理職の域からは抜けられません。

話を分かりやすくするために、委員会設置会社で説明しましたが、違う組織形態でもだいたい似たような感じです。 社長だろうが役員だろうが所詮は雇われサラリーマンの構造は変わりません。

株主のプレッシャーは厳しいです

特に持ち合いではない、外資のファンド、海外の年金基金とかね。 皆さんプロのモノ言う株主です。 冷徹なビジネス論理で詰めてきます。

株主総会シーズンに、特殊株主・橋本和夫さんの不規則発言を見て、笑ってる場合じゃない。

「自分は社長になる」は本気だったが…

プロフィールのところで、自分は入社時に「社長になる」つもりで入社したと書きました。

それは冗談ではなくて、かなり真面目にそう思ってて、ついでに言えば、つい最近までそのつもりでいました

ルイス・ガースナーさんの「巨像も踊る」を読み
ジャック・ウェルチの「我が経営」を読み
カルロス・ゴーンの「ルネッサンス」を読んで

自分の会社のどこがダメか、どう改革していったらいいかを、入社時からずっとメモを書き溜めてました。

高い目線を持ちつつ、日々の仕事をしていると、会社活動はわからない事だらけです。 専門のITだけでなく、会計、人事、調達、法務、品質管理etc…興味はどんどん広がり、その度に本屋に足を運んで専門書を読みふけってました。

しかし、自分のポジションも上がるにつれ、実際の経営陣を目の当たりにしてくるようになると、少しづつ違和感を覚えていきました…。

そうして、40歳を迎えて自分の50代、60代、70代を想像した時

  • 意思とは関係なくスケジュールが詰め込まれ
  • 夜は毎日接待で会食 ・上からは詰められ
  • 事業はしがらみでコントロールが効かない

という状況がリアルに目に浮かんできて、自分の本当に目指したい人生とは乖離を感じました

お酒を飲むおじさん
毎晩のように接待も大変

「結局、雇われの身である以上、どんなに偉くなっても中間管理職の域は出られないんだよな

「いっそのこと、オーナー経営者として、自分の会社でスモールビジネスを確立した方が自由かもしれない。」

鶏口となるも牛後となるなかれ

その言葉が、徐々に自分の中で大きくなり 最終的に独立を決意するに至った次第です。なんだかんだ、世の中で一番自由に振る舞えるのはオーナー経営者だと…。

オーナー経営者

そんな背景も、私が退職を決めて独立を志した理由の一つでありました。

 

それに、偉くなってストレスで髪の毛が抜けるのも嫌だしね

 

【ネタ元】

今回の記事は以上です。お楽しみいただけましたでしょうか。

少しでもふふってなったら、拡散してもらえると幸甚です。励みになります。誰がハゲだって?

次回の記事は 15年勤めた企業を退職した理由 (6) 人材育成の重要性と限界です。

乞うご期待!