第6話「褒めて伸ばせとか言うけどさ…」人材育成の重要性と限界(前編)

レクチャーしている姿

やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ

山本五十六

今回のテーマは人材育成です。分量が多いので前編と後編に分けてお送りします。前編は主に人材育成の重要性についてご説明します。

人材育成の重要性

落とし穴に落ちるバカらしさ

新人の時、配属されたプロジェクトでサーバー構築をやっていました。サーバーにLinuxをインストールし、試行錯誤しながらサービスの設定をするのですが、なかなかうまく行きません。

マニュアルを見ても、ネットで調べてもエラーが解決できず、半日ほどハマってしまったので上司の主任に相談しました。


「あ、それね、ここの設定ファイルのこの部分を変えればOK」

「最初、みんなが一回はハマる地雷なw

「通過儀礼みたなもんだよ、かっかっか」

チームの全員が自分を見ながら笑っています。私は思わず怒りがこみ上げてきました。

怒りの姿
新人時代のケビン松永(イメージ)


「落とし穴があるの分かってて、最初から言わないで、それに落ちるの見て笑ってるのって何なんですか?」

「こんな地雷にハマったからと言って、自分が成長するとも思えないですし、会社活動として非効率極りないですけど、バカなの?

若い頃のケビン松永が、本当にそう言ったのかどうか、もう覚えておりませんが

それ以来、企業の人材育成や教育には、多大ならぬ関心を抱いて参りました。

部下の育成も、普通の人の10倍ぐらい真剣にやってきた自負があります

同僚との勉強会とか、社外の人と議論したりとか、コーチングの本を読み漁ったりとか、手当たり次第に良いと思える事に取り組んできました。

体験して学べという文化

前職でいろんな部署の人と、人材育成について議論をしていた時に


「自分が経験して失敗した事が、一番よく身につく」

「手取り足取り教えたら、自立的に考える人材が育たなくなる」

と考える方がけっこう多く、これは企業文化なのかなと感じました。

まあ、その考えも気持ちは分かるんですけど、その考えはクソだなって思います。

もっと昔に、カバーする領域は今より全然狭くて、人材育成にも時間が掛けられていた頃は、それで良かったんでしょうけどね。

カバーしなければいけない戦線が日々拡大していて、
身につけたスキルがすぐに陳腐化してしまう現代では

自分で時間を掛けて実際に体験してるだけだと、学ぶのに時間が掛かりすぎて、すぐに死ねます。

もうね、火打ち石で火をつけて学んでる時間なんてないんですよ。相手が新人でも、早くチャッカマンを手渡して、短期間で一人前になってもらって

早く前線で、ガスタービンの燃焼振動とか、アーク溶接の安全衛生について悩んで欲しいんです。

火起こし
基礎から学ぶって、そういう事なのか?

最初にちゃんとインプットする

アウトプットを強制してもダメ

マネージャー研修などでは、部下の育成にあたって

「マネージャーはゴールを明確にせよ」
「ゴールへの到達方法は部下に自分で考えさせよ」

と教わったりします。ゴールさえ明確に定義してやれば、部下はそこへ辿り着く最適解を考え自律的に動くという事らしいです。

私もそう習ったので、これまでいろいろ試行錯誤してきましたが、そういうやり方で、自律的にアウトプットを出せるのは、本当に一握りの人材だけでした

いくらゴールを明確にしてやっても、インプットが不足している場合、アウトプットを強制してもダメです。その時に持ってるインプットのみで、なんとか組み合わせて変なアウトプットを出すだけです。

インプットの重要性

まだ、日本語を習い始めたばかりの人で
50音も全部覚えてないのに

「和歌を吟じろ」

と指示したところで意義は薄いのです。

最低限、あいうおえは全部教えて、57577を教えて、季語を教えて、それからようやく和歌を詠むことができます。

和歌を詠む人
最低限のルールは最初に教えておいて欲しい

同じような感じで、初心者に何かを教えるのであれば、基礎中の基礎と、ベストプラクティス、アンチパターンぐらいは、丁寧に教えたほうが良いというのが私の信条です。

ただでさえ、IT業界はカバーする領域が無限に広がっています。RPGのダンジョンみたい。

迷路

経験豊富な人は、ダンジョンの隅々まで見えますが、経験が薄い人は「たいまつ」ぐらいしかアイテムが無く、視野が狭いです。

適切にナビゲートしてやらなければ、なかなか迷宮を出られません。

たいまつ
僕だって最短ルートで行きたいさ、そりゃ

そもそもスパルタ教育って意味あんの?

無理にアウトプットさせようと、部下を質問責めにしてる上司もよく見ました。


「これやる目的分かってる?言ってみ?」

「何で?何でそう考えたの?」

上司は無限ループで質問を繰り返しますが、もう1ミリも育成になってない。

本人はスパルタ教育と言ってますが、見る人が見れば単なるパワハラです。

 

それに自分は、そもそもスパルタ教育って意味あるのかなと思ってます

かつて、日本のプロレス界で人気を二分した
ジャイアント馬場とアントニオ猪木。

その2人は、同じ師である力道山先生に育てられました。

力道山先生は、2人をあからさまに差別待遇します。

馬場さんにはチャンスを与えて褒めて伸ばし、逆に猪木さんは徹底的にしごく。

力道山先生は後年こう仰いました。

強いレスラーには2つのタイプがある。

馬場のように天性の恵まれた体格とパワーで圧倒できるタイプと、猪木のように中型の体格を努力と根性で強化するしかないタイプだ。

当然その育て方も違う!

わしは馬場にはどんどんチャンスを与え、天性の素質を花開かせるようにし、逆に猪木には、下積みの苦労、そこから生まれる雑草の強さを期待した。

力道山とアントニオ猪木
靴べらで殴られる若き日のアントニオ猪木

(画像出典:プロレススーパースター列伝 なつかしのB・I砲G馬場とA猪木

でも、どうなんてしょう。

猪木さんだって、馬場さんと同じようにチャンスを与えられて、褒められて育てられたら、実はもっと強くなってたかもしれないじゃないですか。

スパルタ教育って本当に効果あるんでしょうか。


成功者した人が、自分が受けた過去の不当な仕打ちを、美化してるだけなんじゃないでしょうか

まあ、スパルタvs自主性 の教育論はけっこう奥深いです。

高校ラグビーで花園を目指す、筑紫高校と東福岡高校の話も
すごく考えさせられるので、育成に興味がある人はぜひ御覧ください

以上、今回の内容をまとめますと
自分は早い段階で人材育成の重要性を認識し


・最初はできるだけ丁寧に、基本ルール、ベストプラクティス、アンチパターンを教える。

・インプットが足りてないステージでは、無理にアウトプット求めない

・スパルタ教育よりも、褒めて伸ばすコーチング

という方針で、人並みならぬ情熱を注いで参りました。

次の記事は

第7話「お前!やる気ないだろ!」「それが何か?」人材育成の重要性と限界(後編)

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