大きな組織で働くのは、上司も部下も同僚も、全員で満員電車に乗ってるようなもの。
1人1人にはそんなに悪意はない。でも、電車の曲がり方や揺れ方によっては、あるポイントに物凄い圧力がかかってしまうことがある。
だから、常に先を予測して、押し潰されないようなポジショニングが重要だよ。
自部署に新人が配属されると、私はよくこんな話をしていました。
数十年来、日本の会社の正社員は、非常に恵まれている境遇だと言われてきました。
雇用は安定しているし、額の多寡はあるけどボーナスだってもらえる。社会保険や福利厚生が充実していて、様々な手当だってある。
しかし、そのメリットは年々薄れていて、今後もどんどんサラリーマンを取り巻く環境は厳しくなってくると思われます。
イメージ的には、孫悟空の頭の輪っかが、どんどん締まっていく感じですよ。
私が企業を退職した理由の第一回目は、企業の正社員を取り巻く外部環境の厳しさについてです。
悲しいぐらい上がらない賃金
まず、こちらのグラフをご覧下さい。
(画像出典: 独立行政法人労働政策研究・研修機構)
どうですか。悲しくないですか? 僕はもう、涙でディスプレイが曇ってはっきり見えません。
1990年代後半から、ずっと賃金上がっていってないんですよ。
自分も管理職だったんでね。その時期がくれば、部下の賃金考課とか付けるわけです。
一緒に働いてれば、まあ、部下にも愛着湧くじゃないですか。
普段から頑張ってれば、まあちょっとイマイチなところあっても、良い考課を付けてあげたいなとか思うじゃないですか。
そろそろ子供も大きくなるらしいし、人生設計も含めて賃金上げてやりたいと思うじゃないですか。
でもですね…。人事部から展開されてくる考課マニュアルには
「組織への貢献度を精緻に評価した上で、真に吟味した賃金考課を実施お願いします」
みたいな事が赤字で、強烈に書かれてるわけですよ。
からいの。本当に賃上げについて、企業は評価が辛いの。
何でこんな事になってると思いますか?
株主からのプレッシャー
一つには株主からのプレッシャーが上げられます。株式持ち合い文化が徐々になくなり、経営陣も株主から追い詰められるようになってきました。
「もっと利益を出して、配当や株価向上施策に使えよ、ゴルァ!」
多くの経営陣も、別に鬼ではないのです。彼らも雇われサラリーマンなのです。
怖い上司(株主)に詰められると思うと、どうしても賃金を上げづらいのです。
増え続ける社会保険料負担
もう一つのグラフは、社会保険料率の上昇です。
(画像出典:2015年度 税制調査会 – 内閣府)
年金、健康保険、介護保険などの社会保険料は年々上昇していて、いまや従業員負担は約15%弱です。
それだけではありません。
企業は「事業主負担分」というものを約15%納めているので、企業から見れば広義の人件費が年々上昇してきたとも言えます。
経営陣だって人間です。自分の会社の従業員にはたくさん賃金を払いたい。
しかし、経営努力で業績を向上させても、株主と社会保険料に吸い上げられてしまっていて、なかなか賃金が上げられない。
残念ながら、今の日本社会はそういう構図にあります。
雇用慣行の歪みがブラック職場を生んでいる
整理解雇の4要件
正社員の雇用は、労働基準法第18条の2項によって、強力に保護されています。
日本企業の経営者はたとえ無能な従業員であっても、その理由では解雇できません。
それで、何が社会通念上相当については、整理解雇の四要件として過去の判例が積み重ねられています。
法律と労働慣行によって、日本企業の経営者はいったん従業員を雇ったら、最後まで従業員の面倒を見ないといけないプレッシャーを受けています。
定年まで勤められる人は少数
ただですね…そもそも論ですけど、近年は本当に雇用が守られているのかというのも疑問です。
テレビCMで見るような、花束を渡されて拍手で職場を送られるみたいな、定年退職の場面って皆さんの職場で見かけますか?
私は、数えるほどしか見たことありません。
早期退職勧奨
企業の経営不振に陥ると、リストラ数千人!なんてニュースが流れますよね。そういった場合は、退職金の割増などを条件に、早期退職プログラムが組まれます。
でも、そうではない日常の仕事の中でも、水面下で早期退職勧奨は粛々と行われております。
人事システムがバッチ処理を回すと、年齢などを条件として候補者が抽出されます。
そして人事部から人事権者に対して通知が行くわけです。この中から○名を目安として、早期退職勧奨をヨロシクと。
もちろん強要するわけにはいきませんので、本人納得の上での退職となるように面談を行います。
「退職勧奨を言い渡す仕事だけは、最後まで本当に嫌だったな」
自分の親父も言っていました。現役の管理職も口々に言っています。なんかもう書いてて、全オレが泣いてるんですけど。。
昔はうまくいってたのかね
経済が右肩上がりの時代は、無能なおっさんだって、企業が懐に受け入れてやれるだけの余裕があったのかもしれません。
しかし、正社員で定年まで勤めるという雇用モデルは、徐々に時代にマッチしなくなってきて
既にあんまり機能していないのではと感じます。
自分が退職決めたのには、そういったサラリーマンを取り巻く厳しい外部環境を、最前線でビリビリ感じていたという事が背景にありました。
はぁ、世知辛いですね…仕上がりたい…。
来世は代々木上原の地主に生まれ変わりたいもんです…。